Life is a Business


"人生はビジネスだ"と言ってしまうと寂しく思うかもしれない。それは恐らく"家

庭を顧みず 24 時間戦う企業戦士"を連想するからだ。


しかし、人生がビジネスであることは紛れもない普遍的な事実である。今後は違

った意味で人生をビジネスであると考える必要がある。


人生がビジネスである理由


ビジネスとは広義には個人または法人組織などの事業体がそれぞれの事業目的実

現のために、人・物・カネ・情報などの諸資源を活用して行う活動全体を指す。


つまり、営利・非営利に関係なく事業目的を実現するために資源を活用すること

は既に"ビジネス"である。


事業目的が"自分自身及び家族を食べさせる"ことであれば既に原始時代から行われ

ていた狩猟採集もビジネスである。


現代において自分自身や家族といった集団が生きる目的で外部へ役務提供して家

計を維持する活動もビジネスと言える。


資源


生活とビジネスを資源という観点から見ていく。


ビジネス資源


ビジネスは人・物・カネ・情報などの諸資源を活用して行う活動である。


経営資源という本来の意味では、これらの諸資源を有機的に結びつけて事業目的を達成

させるが、ここでは便宜上それぞれの資源を直接利用したビジネスを例示する。


1. 人的資源を活用したビジネス


人という資源を活用したビジネス。多くの人にとって最も馴染み深い。


意外なことに狩猟採集は人的資源活用の要素が小さい。なぜなら費やした労力が

確実に成果につながる確証はないからだ。丸 1 日釣りに時間を費やして 1 匹も釣

れない状況がわかりやすい。


一方、農耕牧畜は人的資源活用の要素が大きい。やり方によって多少の成果の差

は生じるものの天変地異や戦乱などの有事を除き全く成果がないことはあり得な

いからだ。


2. 物的資源を活用したビジネス


物という資源を活用したビジネス。具体的には土地や建物のような不動産、設備

や道具のような動産など対象が有形なものに限られる。


活用方法としては土地や建物の賃貸や転売、設備や道具を利用した産業全般、設

備や道具そのもののレンタル・リースや転売がある。


3. 財務的資源を活用したビジネス


カネという資源を活用したビジネス。具体的には余剰資金の再投資。


カネの価値は交換対象の価値によって左右されるので物価など対象価値の変動に

基づいて適切な運用をしなければ保有資金の価値の目減りを防げない。


4. 情報的資源を活用したビジネス


情報という資源を活用したビジネス。具体的には取引の仲介やコンサルティング、

デジタル資産など対象が無形なものに限られる。


個人的に歓迎しないが"情報商材"や"セドリ"といった"情報の非対称性"を利用した

ビジネスも含まれる。


"情報銀行"や"分散型台帳"のような将来的なデータエクスチェンジも情報資源を活

用したビジネスだと言える。


生活資源


ビジネス資源に倣った生活資源の分類を試みる。


1. 人的資源


自分自身や生計を共にする成人家族の時間の多くは外部に対する役務提供という

形で時間を切り売りして資金を得ている。大多数の家計の資金源は労働対価によ

るものである。


また、家事や育児など生活を維持するために必要な活動は言わば自家用の役務提供である。


2. 物的資源


自分自身や生計を共にする成人家族が所有する動産・不動産。大部分が自家用だ

が不要になったものを賃貸したり販売する場合もある。


当初から事業目的で取得する場合もある。


3. 財務的資源


自分自身や生計を共にする成人家族が保有する余剰資金。多くの場合、預金や有

価証券などの形で保有している。


4. 情報的資源


自分自身や生計を共にする成人家族が生み出すクリエイティブな作品、または

日々の経験や行動履歴といったノウハウやデータソース。今後、デジタル資産と

して有用になる可能性が高い。


コスト


資源は事業目的を達成するために必要不可欠であるが、資源を活用するためには

コストがかかる。


次に生活とビジネスをコストという観点から見ていく。


ビジネス資源にかかるコスト


ビジネスにおいて人・物・カネ・情報といった諸資源を得たり活用・維持してい

く上で負担は免れない。具体的に、それぞれの資源で必要なコストを以下に列挙

する。


1. 人的資源にかかるコスト


• 採用に関する費用

• 評価に関する費用

• 報酬

• 配置と異動に関する費用

• 昇進に関する費用

• 退職・解雇に関する費用

• 能力開発に関する費用

• 福利厚生に関する費用

• 保険に関する費用

• 交通費

• 通信費


2. 物的資源にかかるコスト


• 仕入れに関する費用

• 製造・加工・建築に関する費用

• 在庫に関する費用

• 減価償却費

• 修繕・維持管理に関する費用

• ファイナンス・リースに関する費用

• 購入・売却に関する費用

• 賃貸借に関する費用

• 保険に関する費用

• 水道光熱費


3. 財務的資源にかかるコスト


• 手数料に関する費用

• 利息に関する費用

• 手形に関する費用

• 社債に関する費用

• 株式に関する費用

• 保険に関する費用


4. 情報的資源にかかるコスト


• システム開発・運用に関する費用

• 知的財産に関する費用

• 保険に関する費用


生活資源にかかるコスト


生活資源のコストを以下に列挙する。


1. 人的資源にかかるコスト


• 食費

• 交際費

• 教育費

• 健康・医療に関する費用

• 趣味・娯楽に関する費用

• 美容に関する費用• 保険に関する費用

• 交通費

• 通信費


2. 物的資源にかかるコスト


• 住宅に関する費用

• 自動車に関する費用

• 日用品に関する費用

• 衣服・装飾に関する費用

• 保険に関する費用

• 水道光熱費


3. 財務的資源にかかるコスト


• 手数料に関する費用

• 利息に関する費用

• 保険に関する費用


4. 情報的資源にかかるコスト


• システム開発・運用に関する費用

• 知的財産に関する費用

• 保険に関する費用


因果関係が見えにくいコスト


ビジネスに必要な資源の活用・維持にかかる費用は、ある程度やむを得ない支出

として許容できる。しかし、以下に列挙するコストは因果関係が見えにくいため

投資判断しにくい。


1. 情報伝達コスト


商品やサービスは消費される前に消費者に認知される必要がある。また、認知さ

れた後に消費者が内容を納得して消費される必要がある。こういった広告・マー

ケティング、販促、仲介に関する費用。


2. 信用コスト


企業そのものや取り扱う商品やサービスの品質を担保する根拠。製造工程や輸送

に関するトレーサビリティ、商品やサービスのアフターフォローや保証、社会や

環境への配慮に関する費用。


貨幣経済から信用経済へ


現在、貨幣経済から信用経済へパラダイムシフトが起きている。このパラダイム

シフトにおいて個人としてどのように立ち振る舞うべきか考察する。


産業革命


産業革命によって大きな資源を得て大きな事業を成すことが可能となった結果、

労働・金融といった企業への資源供給システムが発達し、貨幣を前提とした貨幣

経済が主流となった。


家計においても労働賃金により生計を立て、余剰資金を金融に回して財を成すこ

とが可能になった。


企業において物・カネといった資源を運用するために人という資源が 100%活用さ

れたため、企業経営において組織マネジメントは非常に重要なテーマとなった。


情報革命


情報革命によって情報伝達コストや中間マージンが低下したことにより様々な職

業が減りつつある。今後は AI や IoT の発達に伴って更に人の仕事が奪われていく。


また、シェアリングエコノミーの発達による物的資源の最適化、3D プリンタの発

達による開発・製造そのものの低コスト化により、物的資源や財務的資源も以前

ほど大規模なものは必要なくなった。


つまり、大きな資源を集中させて大きな事業を成すという企業の役割はなくなり

つつある。


所有から利用へ


人ではなくシステムが経営資源の最適化を行うようになると、前述したコストの

うち情報的資源にかかるコスト以外は費用が減少する。


例えばカーシェアリングやシェアサイクル等によって社用車や自家用車の所有を

止めたり、自前のオンプレミスシステムからクラウドサービスへ移行するなど所

有する費用も減少している。


今後、企業にも資源の共有が浸透していくため、個人や法人を問わず資源の共有

ニーズは増大する。


生活資源のビジネスへの転用


シェアリングエコノミーの発達によって今後は生活資源をビジネス転用すること

が当たり前になる。


これが新しい"Life is a Business"である。


ビジネス転用後の生活資源


生活資源をビジネス転用すると生活資源は以下のように変化する。


1. 人的資源


人的資源以外の収入が増すことで現代のような労働一極集中型の収益構造から脱

却できるため、家計の人的資源、つまり自分自身や家族の時間を有意義に使うこ

とができるようになる。


いわゆる"生活のために働く"ということはなくなり、趣味や家族など自己実現に時

間を費やせる。もちろん、これまで通り労働や事業に時間を費やすことも可能だ

が市場環境は厳しくなる。


2. 物的資源


生活のために所有していた物的資源をシェアリングエコノミーに提供することで

対価を得ることができるようになる。逆にシェアリングエコノミーを活用して所

有することを止め、費用を削減することもできる。


収支のバランスによって判断する。


3. 財務的資源


金融が更にデジタル化され、送金・トレード・投資・融資などの利便性が向上し、

手数料などのコストが削減される。


4. 情報的資源


現代でも既に個人が創出したクリエイティブ作品のマネタイズが実現しているが、

人的資源の空き時間が増えることで情報的資源の生産が活発になる。


また、日々生活によって発生する行動履歴は社会や組織の意思決定における有益

なデータソースとなるため、データエクスチェンジ市場において取引されるよう

になる。


これらのデジタル資産の運用は新収益となる。


個人と法人の規模の差が小さくなる


現代の法人における組織の判断や執行は AI とスマートコントラクトで代用されて

いくため、経営者・従業員といった人的資源の規模が縮小する。極端に言えば 1

人で意思決定できるようになる。


また、ビジネス転用後の生活資源と冒頭に提示したビジネス資源を比較すると、

生活資源における物的資源がビジネス転用されるにつれ、ビジネス資源における

物的資源が所有から利用へ大きく変化し、規模が縮小する。


このように個人と法人の資源規模の差が縮小してくると、人が組織に参加する動

機は理念やビジョンのみとなる。


逆に言えば個人も情報伝達コストや信用コストを負担するようになる。


信用とは?


信用とは端的に言えば行動履歴である。それも現代の SNS のように個人が虚像を

申告できるようなものではなく、第 3 者によって記録された客観性の高い履歴で

ある。


また、人や組織の信用の根拠となる履歴まで記録するのであれば、記録される内

容が事実であるかどうかが重要であり、この部分は分散型台帳の改竄耐性がいく

ら高くても意味がない。


つまり、客観的な第 3 者とは人間ではない。人間は感情に左右されやすく主観で

動く。ミスもすれば故意に不正も働く。したがって、分散型台帳に記録するデバ

イス、そのデバイスで動く処理が正当に動作していることを保証することが重要

になる。


今後は"分散型台帳に書き込むことが可能なデバイス"が重要になる。


自律分散型社会


AI による人的資源の削減、シェアリングエコノミーによる物的資源のコスト削減、

データエクスチェンジによる新収益の創出、人や組織に対する信頼性向上に向け

た分散型台帳とスマートコントラクトの整備によって、これまでの中央集権的で

大規模な組織は競争力が低下する。


競争領域は AI やスマートコントラクトの判断と執行、シェアリングエコノミーか

らの調達、その原資となるトークンとデータの流通にシフトするため、そこに最

適化された非中央集権的な自律分散型組織が台頭する。


自律分散型社会における人の役割


現代の政府や企業経営レベルの判断と執行が AI とスマートコントラクトで代用さ

れるようになってくると、人々は社会に対して労働力よりも意思を提供するよう

になる。


つまり、すべての人々が組織に対して発言したり投票することで株主のように振

る舞うようになる。


もちろん、社会の大方針さえも AI で判断するという考え方もあるが、人類のため

に社会の大方針を決定する前提であるならば、その時点での最高意思決定 AI に対

する方針決定は人類が行うべきである。


また、国家の意思決定により他の組織の意思決定を自動化してはいけない。全体

最適と部分最適のバランスは各組織の最高意思決定 AI に対して人が大方針を示す

べきである。


それが人類の責任である。


自律分散型社会に必要な能力


現代の間接的な選挙ではなく具体的な意思を提示するわけだから他の参加者が納

得する根拠を示す必要ある。そのためには客観的なデータを自在に扱える能力が

必要になる。


そんなものは誰かが便利なツールを提供してくれるという考え方もあるが、他人

が作ったようなツールで組織の最高意思決定 AI の大方針を決定するのであれば、

そのツールが事実上の最高意思決定機関となる。


様々なものが最適化されて競争領域が最高意思決定に集約した社会で他人が作っ

たツールに依存して生き残れるほど甘くない。他人が考えないような切り口でポ

ジショニングするからこそ存在意義がある。


資源として生かされていた人生から資源を活用する人生へ


現在、収入が 100%労働収入である人は極端に言えば社会の人的資源として生かさ

れている存在である。


我々は無意識に様々な資源を保有している。それは住宅や自動車のような有形な

物はもちろん、経験や特技など集約すれば価値が増幅するような無形な情報まで

含まれる。


誰もが既にビジネス転用可能な資源を持っている。ビジネス転用せずに自家用に

所有するのみであればコストしか生まれない。そのコストを払うために自分の時

間を切り売りする人生で良いのか?


"Life is a Business"


それは自分の人生を取り戻すことである。